最近、とても気になっているミュージシャンがいる。小坂忠。彼は「ミュージシャン」であり、「ゴスペルシンガー」であり、「ワーシップリーダー」、そして「牧師」である。
70年代、ティンパンアレー（現ティンパン）やはっぴぃえんどなどと共にロックシーンの中で活躍していた。ティンパンアレーには、現在も活躍している細野晴臣や鈴木茂、松任谷正隆などが在籍していて、小坂は大貫妙子や矢野顕子などど共に重要な存在になっていた。

そんな彼の一つの転機になったのは、75年にリリースしたアルバム「HORO（ほうろう）」だった。ティンパンアレーとのセッションによって出来上がった歌には、小坂や様々なミュージシャンによって今でも歌い継がれている歌がある。その歌は「機関車」。
「忘れ物はもうありませんね…」ではじまるこの歌は、ラブソングであると同時に、メッセージソングでもあり、スピリチュアルソングである。歌詞に書かれている「君」は、主人公の好きな人であると同時に、主人公が共に歩んでいく「ある人」でもある。76年にクリスチャンになった彼は、78年、ゴスペルを日本に伝える為にゴスペルミュージックレーベル「ミクタムレコード」を設立し、様々な場所でワーシップ活動を行っていく。

私が小坂忠の存在を知ったのは、短大でゴスペルコンサートを岩渕まことと行っていた時に見たのだけど、その時はクリスチャンシンガーとしてしか認識していなかった。当時から教会や短大でゴスペルを讃美していたから、彼の書いたゴスペルソングを歌う機会があったし、彼が歌うゴスペルにいくつか心にひっかかったのはあるものの、ぐっとひきつけられるものはなかった。小坂が主宰する大規模なワーシップイベントにも興味はあったが、忙しくて行かれなかった。
1992年、矢野顕子がピアノ弾き語りのコンサートを見に行った。コンサート中盤で彼女は、小坂忠の「機関車」を歌った。彼女が歌い始めた時、私は一瞬ピンと糸が張られたような緊張感を覚えた。そして、心から感動した。今までここまで神聖なスピリチャルソングに出会ったことがなかったことにも気づかされた。

1997年、小坂忠はソロでゴスペルアルバム「Peace*3」をリリースした。その１曲目は、セルフカバーで彼が歌った「機関車」だった。２曲目からはゴスペルソングが続くのだが、アルバム全体の印象を感じさせる１曲目に「機関車」を入れることに小坂忠はどんな意味をもたらしたのだろう。
彼が「機関車」を発表したのは1975年。セルフカバーで再び出したのが1997年。「HORO」をリリースした翌年、クリスチャンになり、その後彼はゴスペルを通して神様の愛を伝えつづけてきた。そして彼が伝えたことに対する成果は着実に根付いてきた。だからこそ、再び歌い直すことで、信仰の原点に立ち返ったのではないだろうか。そう、あの時の「機関車」で歌われている「君」は神様なのかも知れない。私自身も、この曲を聴くたびにいつも励まされている。小坂忠が今日まで書いてきたスピリットソングには、いつも神様の存在を感じることが出来る。

さて、90年代が終わろうとしている時、小坂は新たな動きを見せ始めた。1999年暮れ、イベントであのティンパンのメンバーと再会した。それがきっかけで去年は彼らのアルバムやツアーに参加した。そして、今年はポップスとしては25年振りとなるソロアルバムを、ティンパンを初めとするFriendsたちと共に作り上げるという。そして、10月11日にはシングル「夢を聞かせて 」、11月7日にはアルバム「People 」が発売されることになった。更に、レコーディングメンバーである「Friends」と共にライブも行われる事になる事も決定し、彼の現在の姿を見ることが出来る事をとても楽しみだ。
「機関車」がもたらした様々な出会いや出来事を、彼は自分のホームページで「アメイジングな日々」と喜んでいる。神様と共に着実に歩んでいったことが「驚くばかりの」恵みを与えてくれたのだ。彼の中にあるスピリットと神様への愛は、ずっと変わっていないことだろう。だからこそ、これから小坂忠が私達に何を伝えていくのかが、楽しみであり、興味深い。さて、これから彼が運転する機関車に乗って、神様と一緒に旅を始めてみようか…。♪

小坂忠オフィシャルサイト Chu's Web