FRUITS
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フルーツ/1996/07/01

インターナショナル・ホーボー・キング
楽しい時〜Fun Time
恋人達の曳航
僕にできることは
天国に続く芝生の丘
夏のピースハウスにて(インストゥルメンタル)
ヤァ! ソウルボーイ
すべてうまくはいかなくても
水上バスに乗って
言葉にならない
十代の潜水生活
メリーゴーランド
経験の唄
太陽だけが見えている - 子供たちは大丈夫
霧の中のダライラマ
そこにいてくれてありがとう - R・D・レインに捧ぐ
フルーツ - 夏が来るまでには

(曲名をクリックするとショートコラムに飛びます)

cheery
(c)m-style
FRUITS 17 Song's Imagination

strawberry1996年7月1日。
佐野元春は、オリジナルとしては約2年半振りとなるアルバム『フルーツ』をリリースした。私達にとって待ち遠しかった元春の新作だが、実際聴いてみるとその長さを感じられない、あっという間の様に思えるのは私だけだろうか…。

お久しぶりです。昨年初夏以来『Party!』を休刊していた私ですが、元春の活動再開を機に久々に作ってみました。1号目を出した後にあれも書こう、これも書こう、と自分で想像を働かせていたのはいいのですが、その想像を文章にまとめる事に煮詰まっていました。私のワープロのフロッピーは、書きかけの作品があちこち散らばっていてパンク寸前です。

「僕の庭から始まる。僕の庭に終わる」

元春から届けられたこのメッセージを私はしっかり受け止めて、文章を書き綴りたいと思います。『フルーツ』のガイドブックみたいな形のコラムをどうか気軽に読んでいただけたら嬉しいです。

96/10/16 Party? Party! vol.2 "Hello,It's Me!"


grape 大きなバスケット(CD)に積み込まれた17の果物(楽曲)たち。
そのどれもがみずみずしく、味わいがある果物ばかりだ。それらを食べて(聴いて)みると、自然な甘さと酸味がほどよく効いている。そして食べ(聴き)終わった後には、体の中にフルーツから醸し出されるみずみずしさと甘さと酸っぱさとが残る。それは毎日の生活の中で私自身に必要な、次に向かっての活力源になっていく。
佐野元春の新しいアルバム『フルーツ』を、私はこんなふうに味わっている。曲目紹介も兼ねて、17のショート・コラムを書いてみた。

インターナショナル・ホーボー・キング
International Hobo King

小鳥のさえずりと、機械的な電子音。そして複雑なリズムとメロディ。
アルバムの最初を飾るナンバーは、佐野元春の新しい仲間のテーマソングでもある。 このバンド名の意味は、元春曰く「国際的流浪楽団」だとか。彼は今まで14年間、共に過ごした仲間達といろんな所へ旅をしてきたが、彼らとの旅は「ハートランド」という家に帰る事で成り立っていた。一昨年の初秋にその家を解体した彼は、今年に入って新しい仲間を連れて再び旅を始めた。 今度の仲間達はいろんな所へ放浪(HOBO)していくのを好む連中達だ。それぞれが異なるルーツやキャリアを持っている彼らとまわる旅で、元春は何処へたどり着くのだろう。


楽しい時〜Fun Time
Fun Time

96年2月27日、神奈川県民ホールのライブ。
アンコールに登場した時、元春はこう言った。

「えー、さっき僕ら演奏したんですけれども、今夜は何だかもう一回演奏したい気持ちになったんだ。 みんなの力を少しだけ借りて・・・」。

そして彼らは歌い出した。とびきりの笑顔で、とびきりのフレーズを。

♪いい時を過ごそう いい時をみんなで〜♪

私にとっての「いい時」って何だろう。元春があの日歌ってくれた「Fun Time」を Swing & Dancingしながら歌った時、そのときがまさに私にとっての「いい時」だった。おそらく会場にいたすべての人々もそうだろう。
「いい時」はいきなりやって来る。そしてあまりにも早く過ぎてしまう。だからこそ貴重。だからこそ愛おしい。だからこそ大切。だからこそ「嬉しい!」。(goto Favorite Songs#2)


恋人達の曳航
Lovers Saling

船に乗って風のそよぐ楽園に向かって、マストを高く上げて進もうとする恋人達。これから2人で共に生きる事はたやすい事ではない現実を彼らは知っている。でもその現実を知りつつもなお、2人は甘い夢を求めていく。


僕にできることは
Things I Could Do

ガレキの中に立って、遥かな地平線の中に覗いている青空を眺めている僕……青空の向こうには君が見えそうで見えない。誰かが「恋することって簡単さ」と言っていたのを聞いて、僕は「でも愛することは難しい」と答えている。僕に出来ることは、君を愛することは何かを朝も夜も考えているうちに、僕はまるで犬の様にくるくる回っていた。


天国に続く芝生の丘
Grass Valley to Heaven

ある教会での結婚式の様子を描いた曲。
近頃、私の周りで結婚する友人が多く、パーティに出席する機会が増えた。その時私は新郎新婦に向けてカメラを向けたりする。カメラのファインダーから覗く2人の晴れ姿は眩しく、近くにいる様で、遠い。幻を見ている感じを持ちつつ、これからの2人の新しい旅立ちと、神様からの限りない祝福を願って、私はシャッターを切る。goto ImagePoetry


夏のピースハウスにて
At The Peace House in Summer

この曲に、彼はどんな詞をつけようとしたのだろう……。


ヤァ!ソウルボーイ
Yah! Soul Boy

ビート・ジェネレーションの象徴であり、元春がずっと追いかけていた人、ジャック・ケルアック。「路上」「地下街の人びと」など、彼の小説に読みふけった人が沢山いるだろう。かくいう私は、というと実は一気に読み始めようと思っていても途中で挫折してしまう事が多い。だから全部読み切っていないうちに彼の事を語るのは早いかなと思ったのだけど、この曲を聞いているうちに、彼の輪郭が少し見えて来つつある。
一昨年暮れ、元春はボストンの北にあるスモールタウンで眠っているケルアックの墓参りに行って来た。今まで追いかけていた一人のビートニクの墓に手を置き、白いディジーとワインを供え、黙祷した時、元春は彼とどんな話をしていたのだろうか。マキシ・シングルのジャケットに写 ってる元春は、ギターを抱えて右手をかざしている。これからも追い続けるべく人の魂に向けて。


すべてうまくはいかなくても
The Night

このアルバムの中で一番初めに印象に残った曲。
心が染みるバラードに涙が出そうな時はよくあるが、今回は歌詞に心が染みた。

『曇り空のこんな日には/窓にもたれて/
すべてうまくはいかなくても/君を信じてる夜』

時には泣きたくなるような気分にさらされる時にこの歌詞を口づさむと、何だか救われていきそうだ。


水上バスに乗って
Water Line

数年前の元春のインタビューより……。

渋谷(陽一)さんの指摘は…どうして土地の名前がニューヨークになっちゃうのか(笑)、いつか“練馬”っていう言葉を使って曲を書いてくれ(笑)と。で、それに対して僕の答えは、『それは清志郎に言ってください』と(笑)。

(『AS 10YEARS GO BY』(ロッキンオン社刊)。ROCK'N ON JAPAN 89年6月号より インタビュアー:渋谷陽一)

あれから数年後、ついに地名が歌詞に織り込まれた曲が出来た。 練馬ではなかったが(笑)。
日の出桟橋と下町・浅草を結ぶ水上バスには、私も何度か乗ったことがある。バスは12本位通る橋の下を走りだす。いつもは橋の上にいる自分が、今度は逆に川から見上げて橋とそこを通 る人や車や電車を見ている。世の中も時には違う角度から見上げると、新しい発見がありそうだ。  プレイグスの演奏は、この曲では少し乾いた感じがするのだが、それが水上バスに乗っている様子とダブってしまいそうだ。元春とのコラボレーションはさすが。


言葉にならない
I can't say anything

疾走感が続く曲の中で、一つの『エアポケット』の様な曲。
ここの主人公は切ない気持ちで君を見つめている。君がつれない表情をしているものだから、何だかじれったい。君への本当の気持ちを言いたいのに、言葉にならない。早く次へ進みたいのに。


十代の潜水生活
Teenage Submarine

私は96年、元春がデビューした年齢に追いついてしまった。十代の時に出会っでから10年近く経とうとしている。十代の時の自分を思い出してみると、先のことを考えないままに突っ走って来た様に思える。それに引き換え現在の私は……なんて考えるのはよそう。いろんな経験をして人は大人になるのだけど、気持ちのどこかにいつでも十代の心を持っていたいと思う今日この頃である。


メリーゴーランド
Mama-Like a merry-go-round

この不思議なドラムで始まる曲の前に、「天国に続く芝生の丘」の間奏の一部が流れている。その風景は子供達を乗せてぐるぐる回っているメリーゴーランドがある。子供達の笑い声も微かに聞こえている。ママはあそこの子供達がいるメリーゴーランドの所へ行こうとしている。その姿をママの息子は嬉しそうに見ていた。童心にかえってメリーゴーランドに乗っているママを。しかし突然メリーゴーランドが止まってしまった。その時、乗っていた子供達と彼のママがどこかへ消えてしまった。まるで夢の世界が終わったかの様に……。息子は『ママー!』と叫んだが、二度と帰って来なかった。


経験の唄
Song of Experience

シングル「十代の潜水生活」のカップリング曲。95年に放映された生保会社のCMソングとしても使われた。ロサンジェルス・ドジャースの野茂英雄投手がキャスティングされたこのCMは、私の心に何かを訴えていた。薄暗いロッカールームで手にした白いボールを見つめる野茂。その風景に……

『たとえこの空が/暗く沈んだとしても/変わらない/君への想い』

1995年からの彼を見ていると、何だか随分前からここにいるような気がする。そういえば近鉄時代の時も、どこかアメリカの匂いを感じていた。元春の野茂に対する想いが、この詞に現れている。


太陽だけが見えている
Be twisted-Kids are alright

元春が出した初めてのベストアルバム『No Damage』(83年)の歌詞カードにこの曲の元となる詩が載っている。書くと長いので省略するが、私としてはこういう詩に曲が付け加えられて歌となるのが、とても嬉しい。そういえば現在ツアーでやっている曲「Sunchild〜サンチャイルドは僕の友達」(アルバム『SOMEDAY 』に収録)も、元の詩は随分長い(カセットブック『Electric Garden』に収録)。誰もが子供だった時がある。『心の中の/瞳の中の/悲しみの中の/退屈の中の…』子供達が生き抜く世界は厳しい。でも、大人になるともっと厳しい世界が待っている。『全世界の腰抜けどもよ』と言い切ってしまうこの世界を生き抜かなくては。


霧の中のダライラマ
DalaiLama

そこにいてくれてありがとう−R.D.レインに捧ぐ
Thank you for being there-Dedicated to R.D.Layng

この2曲を1曲としてとらえていいと思う。霧の中にいる私は、これからどこへ行くのか分からないでいる。得体の知れない『ダライラマ』が私の道を塞いでいる。このまま消えてしまうのかなと思っていたら、急に視界が晴れてきて、たくさんの人達が私に向かって挨拶している。『さよなら こんにちは/そこにいてくれてありがとう』、そして彼らは私に呼びかける『このままずっと 眠っていてもいいよ/このままずっと 笑っていてもいいよ』……最近の私にとってこの言葉でどんなに救われたか、分からない。元春はこの歌を心理学者R.D.レインに捧ぐとしているが、私はこの歌を支えてくれる家族や友人、そしてどんな時でも私を守って下さる神様にささげたい。


フルーツ−夏が来るまでには
Fruits-Summer come we will

ここに納められたすべての曲を一つに寄せ集める『磁石』のような存在の曲。
色とりどりのフルーツが一つのバスケットに並べられた姿を見る時、華やかな色彩 とみずみずしい感覚が私の好奇心をギュッと引き締める。フルーツに見た目の華やかさと中身の新鮮さがあるように、毎日の生活も華やかさと新鮮さがいつも求められている。それがいろいろな理由でその華やかさと新鮮さが失われてしまう。
そんな時元春はこう歌う。『僕らはもっと幸せに、陽気になれるはず』と。
最後の小鳥のさえずりは約束の合図……。


こんな感じでまとめてみましたが、いかがだったでしょうか。
このコラムはあくまでも私自身の感想なので、皆さんにはそれぞれの感じ方でこのアルバム『フルーツ』を楽しんでくれたら嬉しいです。そしてこれは佐野元春にとって、International Hobo King Bandにとって『はじめの一歩』なのだから、今行っているツアー、次のアルバム・ツアーへの新たなプロローグとなるでしょう。私は、この目で、この耳で、彼らのこれからを見守っていきたいと思います。

 
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